今回は、Advanced Web Rankingが発表した「2024年第3四半期と第4四半期のCTR(クリック率)比較分析」をもとに、検索順位や業種別の変動を詳しく見ていきます。

AI Overview(AIO)の台頭が検索行動にどう影響したのかを読み解きながら、SEO戦略の見直しに役立つ最新データを解説します。
参考記事

業界間で広がるクリック率の格差
分析結果では、業種によってCTRの差が急拡大していました。
特に顕著だったのが以下の2業界です。
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科学分野:1位CTRは19.06%
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法律・政府・政治分野:1位CTRは38.45%
前期では両者の差が5.96ポイントだったのに対し、第4四半期には19.39ポイントまで拡大。

およそ3倍の差が生まれており、検索ユーザーの注目分野が明確に分かれています。
全体的なCTR変動の概要
Advanced Web Rankingのデータでは、全体の平均CTRにも次のような傾向が見られました。
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デスクトップ検索の1位CTR:+1.15pp増加
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モバイル検索の2位CTR:−1.22pp減少
情報検索系(Informational Query)では上位順位でクリック率が軒並み減少しており、特にPC検索の上位4位合計で−7.31ポイント。
この変化は、AI Overviewの導入率が33.68%から42.51%へ上昇(+8.83pp)したタイミングと一致しています。

AIOが検索結果上部を占有し、オーガニッククリックの減少を招いた可能性が高いですね!
商業・地域クエリでは安定傾向
一方で、商業(Commercial)系や地域(Local)系のクエリでは比較的安定した動きを見せました。
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商業クエリ:1位CTRはほぼ変化なし、PCの2位CTRのみ−1.06pp
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地域クエリ:1位の変化は最小限、PCの2位−2.10pp、3位−1.25pp

これらの領域ではAI Overviewの露出がまだ限定的であり、従来型のクリック行動が維持されていると考えられます。
検索需要の増減とCTRの関係
業界ごとに見ると、「検索需要の増減」と「CTR変動」には明確な相関があるとは言えませんでした。
以下に代表的な業界別データを整理します。
検索需要が増加した業界
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キャリア
需要:+334.36%
PC上位3位CTR:−4.34pp
モバイル1位CTR:+1.46pp -
ショッピング
需要:+142.88%(ブラックフライデー効果)
PC1位CTR:−1.39pp/モバイル1位CTR:−1.96pp -
法律・政府・政治
需要:+68.66%
PC1位CTR:+7.39pp/モバイル1位CTR:+6.96pp
検索需要が減少した業界
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科学
需要:−37.63%/PC1位CTR:−6.03pp -
テクノロジー&コンピューティング
需要:−20.05%/PC上位3位合計CTR:−5.26pp -
健康&フィットネス
需要:−7.20%/PC1・2位CTR:−3.06pp/モバイル1位CTR:+1.67pp

需要が増加してもCTRが上がるとは限らず、むしろ競争激化やSERP(検索結果ページ)の構造変化が可視性を奪うケースも確認されました。
AI Overviewが検索CTRに与えた影響
今回のレポートで特に注目すべきは、AI Overviewの導入がオーガニックCTRの減少と連動している点です。
Googleの検索画面にAIOが増えたことで、ユーザーがAIによる概要を読むだけで満足してしまい、実際にサイトをクリックする割合が減ったとみられます。
特に情報検索型クエリでは、上位1〜4位が大きな影響を受けており、従来のSEO戦略ではカバーしきれない領域が生まれています。

この変化に対応するには、検索意図の再設計・LLMO(Large Language Model Optimization)対策・Discover流入強化が必要でしょう。
まとめ|CTR格差時代のSEO戦略を再構築する
今回の分析で明らかになったのは、検索CTRがもはや「順位だけでは測れない」段階に入ったという点です。
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業界ごとにCTR格差が拡大
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AI Overviewが情報検索を中心にクリック行動を分断
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需要増=CTR上昇ではない構造的変化
つまり、SEOは順位競争から「可視性と意図理解の戦略」へ移行しています。
今後は、AI要約に吸収されない強い独自価値の提示や、検索以外の導線(Discover・SNS・メルマガなど)の複合戦略が求められます。

CTR変動を単なる数値変化と捉えず、ユーザー体験とAIの関係を中心に設計していくことが2026年以降のSEOで重要になるでしょう。

